「介護」の概念について考える
介護の本質とは?
介護における「自立」とは
世間一般で自立とは「他者の援助を受けないで自力で身を立てること」です。健康に問題がなく成人済みの人にとっては「きちんと仕事をして自分の力で生計を立てること」といった意味になります。しかし、自力で行動することが難しく何らかの介護を必要とする状態になったら「自立」の意味は違ったものになってきます。
介護が必要になるということは他者の支援がなければ生活することが難しくなるということです。そのような状況では、自分で生計を立てたくても立てることはできません。世間一般の「自立」の概念にはそぐわなくなってしまいますが、自立していないわけではありません。
視力が悪くてメガネをかけている人を例にして考えてみましょう。視力が悪くてもメガネをかけていれば問題なく仕事ができるので経済的に自立した生活を送ることはできています。そのような人たちは「自立していない」とは言われません。ですが、メガネをかけている人の多くは市販されているものを使用しているはずです。市販されているメガネは他者が設計し製造してくれたものなので、「他者からの支援を受けている」とも考えられます。その点を考えると世間一般の「自立」の概念から外れてしまいますが、経済的には自立しているので総合的にみるとメガネをかけている人は自立していないとはなりません。メガネも車いすや松葉杖同様、ある種の介護器具です。「車いすや松葉杖を使っている=他者の手助けが必要になるから自立できない」ということではないのです。
自立を支援するのが介護
「自立とは何か」という問題は社会福祉の領域では長年考えられてきました。それを踏まえ、現在の社会福祉では「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」や「障がいを持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」を自立の定義としています。
介護は自力で行動するのが難しい人が少しでもこのような自立した状態に近づくように支援するのが目的です。しかし、階段に手すりをつけたり、車いすを押したり、排泄や入浴を手伝ったりすることが介護だと誤解している人もいます。これは「介護」という言葉の意味が狭い解釈を与えているからです。
英語では介護のことを「care(ケア)」と言い、日本語に比べるとその意味は幅広くなっています。介護の本来の意味は日本語よりも英語の方が近いでしょう。介護とは介護をする家族や介護職だけが行っているわけではありません。この社会では誰かが誰かの自立をケアしています。もしかしたら知らないうちに自分も誰かの介護を受けているかもしれません。
そう考えると、介護は「個々の自立のために助け合う」ことだと言えます。自力で行動できない人をサポートすることが介護ですが、実は人間社会の根底に根付いている人類普遍の概念なのです。
ヘルパーズ・ハイとは?
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他の仕事にはない幸せがある
する側とされる側の幸せのリンク
介護職員の多くはヘルパーズ・ハイの状態で働いているため、ネガティブなイメージが強い仕事も前向きに取り組むことができています。ヘルパーズ・ハイは幸せを感じるオキシトシンとやる気を引き出すドーパミンが脳内で分泌され、多幸感を感じる状態のことです。
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